コロナ禍で利用者減に直面しているホテル・旅行業界の苦境が、周辺産業にも甚大な影響を及ぼしている。ホテル・旅館など宿泊業者向けに食材やサービスを納入する企業の2020年度業績を見ると、前年度から「減収」となる企業の割合が8割に迫るほか、売上高の落ち込み幅は前年度比で平均2割の減少、半数越えの企業が「売上20%以上減」となった。業種別でも、特にビールや日本酒など酒類を中心に扱う酒類卸はほとんどの納入企業で売り上げ減となったほか、食材卸や布団・シーツなどリネンサプライをはじめ幅広い業種で売り上げが大きく落ち込んでおり、経営への打撃が深刻化している。
宿泊業はこれまで、インバウンド需要の取り込みで客足が好調に推移したことで、食事やショッピング、リネンサプライなどサービス業、運輸業など関連する産業でもその恩恵を受けて成長。納入企業の2019年度業績は増収が3割を超えるなど堅調だった。しかし、昨年以降は緊急事態宣言の延長などで客足が大幅に減少したほか、期待された東京五輪が無観客開催となったことで需要が大幅に減少。ホテルでは結婚式など団体予約も延期や中止となり、納入企業も宿泊業の不振に引きずられる形で取引量が大きく減少した。
なかでも、宿泊業を主力得意先とする業務卸や酒類・食材メーカーなど売り上げ激減が顕著で、「これまで4トントラックで酒類を運んできた問屋が、最近では軽トラックでもほとんど空荷状態なほど取引量が少なくなった。」といった声も聞かれ、一転して厳しい経営環境が鮮明となっている。
今年度も引き続きコロナ禍の影響で宿泊客の戻りが鈍い中、長期間の需要減に晒され続けてきた納入企業の中には経営体力が尽きるケースも増え始めており、年末にかけて影響がさらに拡大する恐れがある。