国内タオルの生産量は総じて低迷が続いていた。経済産業省の調査によると、国内のタオル生産数量は2019年で約1万1000トンとなり、前年比96.4%にとどまる。3年連続で前年を下回り、15年間で生産量は半減した。一方、中国製やベトナム製が多くを占める輸入タオルの数量は同年で約7万トンと、国内生産量の6倍超にも達する。これらのタオルは、国産品に比べて低廉な人件費と大量生産を背景とした安さこそが最大の強みで、一般家庭向けのバスタオルやスポーツタオルなどで爆発的に普及した。
一方で、品質面で優れていても価格競争で対抗できない国産品が市場から押し出されたことで、国内タオルメーカーは生き残りを図るため様々な変革や差別化に迫られてきた。その一つが、タオル産地のブランド化など高付加価値路線への転換だ。価格競争に巻き込まれやすい汎用品から脱却し、
「今治タオル」や「泉州タオル」などに代表される、各生産地が独自の品質基準を設けたタオルブランドを創造。贈答用品などを中心とした国産高級タオル市場を形成したことで、価格競争に左右されない収益の確保に成功した。産地のブランド化以外にも、ベビー用品などでニーズが高いオーガニック原料を多用した環境配慮型のタオルや、手触りや吸収性に優れた高機能商品の開発など、各社の技術力を生かした高付加価値商品が次々と登場。こうしたタオル業界の一連の取り組みが、国産タオルの安心・安全・高品質という評価につながり、高価格帯でも売れる要因となっている。
なかでも成果がみられるのは、国内販売に比べて高価格帯中心の商品が多く売れる海外市場向けの販売だ。輸入タオルに比べると4~5倍近い価格差があるなど、国産の輸出タオルは決して安くない。しかし、品質の高さを最大の強みとして中国や台湾などアジア市場を中心にシェアを拡大。グローバルな高級タオル市場で確固とした地位を確立し、小ロット生産・高単価なタオル生産でも業績拡大可能な業態へ転換しつつあることも、業績改善を後押しする要因の一つとなっている。