フィットネスクラブ業界はコロナ禍で苦戦が続いている。
フィットネスクラブ業界は、設備が充実した大型店舗の出店から、提供プログラムの特化などで省スペース・割安な小型店舗を駅前・駅ナカやロードサイドに出店するなどして店舗網を拡大。24時間営業化による利便性の向上、光や映像などを多用したエフェクトスタジオなどサービスの質的向上や差別化にも注力し、顧客層の開拓を進めていた。さらに2019年のラグビーワールドカップ、2020年に開催予定だった東京オリンピックなどの大型スポーツイベントの開催効果といったスポーツ機運の高まりも追い風に、新規顧客を獲得しており、拡大傾向にあった。
しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により経営環境が一変。業容拡大に伴い顧客獲得競争が激化していたなか、自治体からの要請による度重なる営業時間短縮や休業、会費免除や休退会者の増加といった問題に直面した。スポーツ施設が感染リスクの高い施設として捉えられ、各社とも平時の営業状態へ回復するメドが立たない状況が続いている。そのため、大手事業者でも大幅な赤字を計上するほか、特に経営体力に乏しい中小フィットネスクラブが耐えきれず経営破綻や事業継続を断念するケースが増えている。大手でも不採算店舗の整理といった動きが目立つ。
もともと、フィットネスクラブ各社は積極的な業容拡大策を進めてきた。コロナ禍による利用者の急減は各社とも想定外の事態で、休業補償金や雇用調整助成金などの支援もあったものの即座の対応は難しく、会費収入の低下で売り上げ激減を余儀なくされた。加えて、増員したインストラクターに対する給与負担や回収困難となった新規出店費用、既存店の賃料負担が重くのしかかり、大手では数億円規模の欠損となるケースも出るなど、経営へのダメージがより拡大する要因になった。
近年右肩上がりの成長が続いたフィットネスクラブ市場全体でも、2020年度は 大幅な縮小が見込まれる。現状のペースで企業業績が推移した場合、2020年度の市場規模推計は5000憶円台に留まる見通しで、過去最高となった2019年度の役7100憶円から3割超の減少となるほか、過去10年では初めてとなる市場縮小を余儀なくされる見通しだ。