コラム

“ハンコ”の話

 印鑑・印章は契約時の意思表示、また認証手段として用いられてきた社会の重要な基盤だ。
印鑑・印章の製作、販売業者はもとより、収納ケースの作成、レーザー彫刻機の製造や輸入販売、さらには自治体向けに印鑑証明手続きのシステム構築を手掛ける情報サービス企業まで、影響を受ける業種は幅広い。
 一方、異なる意見もある。手彫りの実印製作を主とするある老舗は「こう言っては何だが・・・。
安物のハンコをポンと押せばそれでOK、というこれまでの習慣がそもそもおかしい。役所の認印廃止はある意味、当然の話だ。まずは我々がきちんとした実印を作ること、そしてしかるべき時に押印する文化が遺ればそれでいい。」



[印鑑・印章の歴史]
 印鑑・印章の歴史は非常に古く、紀元前5000年以上前に遡るといわれる。
古代の中東を発祥とし、ヨーロッパやインドへ、或いはシルクロードを介して中国へ伝播した。印鑑・印章は宗教的な護符でもあり、権威や職権を表すものであった。古代の中国で反乱を起こすとまず印綬を奪ったのは、軍の指揮権が人ではなく印綬に帰属するものであったからだ。
 日本では1世紀、後漢が邪馬台国のライバルだった奴国へ送った漢委奴国王(かんのわのなのこくおういん)に始まり、大化の改新後の律令制度において役所の手続きで押印することが定められた。
中世には一時廃れつつ、戦国期に武将の間で復活した。金融システムや郵便制度も整った大正・昭和の時代には諸般の手続きにおける署名捺印が定着、実印・銀行印・認印・角印・丸印などが用途によって使い分けられるようになり現在に至る。
ここが日本がハンコ社会、独特の習慣と揶揄される所以だ。
こうした伝統・技術・様式美を資産として持っていることは印鑑・印章業界に非常に大きなアドバンテージだ。
 実はハンコを必要とする国は必ずしも日本だけではないのだが、デジタル万能の時代にはそぐわない制度ではあり、利便性・効率性が最優先される実用の場から消えていくのは致し方ないことなのかもしれない。
 使う機会が減るとしても、成人したときに実印を作る風習は今後も残り続けるだろう。
レコードや万年筆がそうであったように、完全に消え去ることはなく半ば実用性を兼ねた嗜好品として、新たな価値が生み出されていくと思われる。
(帝国ニュースより引用)

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